近視の進行を抑制できるか

こんにちは。四日市市の大川眼科 院長 大川親宏です。
今週は世間ではお盆休みですが、当院は通常どおり診療を行っています。

 

今日は近視の進行抑制についてご紹介したいと思います。
この内容は先日出席した眼光学のセミナーで勉強した内容です。

 

そもそも近視とはどういう眼の状態でしょうか?
遠くからきた光が網膜(光を感じる神経の膜=カメラでフィルムに相当する部分)に
ピントが合っている状態が正視。

遠くから来た光が網膜より前にピントが合っている状態が近視です。

 

→ http://www.okawaganka.com/sub_refractive_error.php

 

一般的に近視が強い目は眼軸長(眼球の奥行きの長さ)が長くなります。
したがって、近視が進行するということは、眼軸長が長くなるということになります。

 

さて、過去にどういう状態が近視の進行に関係するかという研究がされています。
その結果は、、、
1. 近くを見る作業を長時間していると近視が進行しやすい

2. 都市部で近視の進行が早い
3. IQや学歴が高いと近視の進行が早い
4. 屋外で活動すると近視の進行は抑制される
5. 遺伝の影響が強い(両親が近視の場合、そうでない場合の7-8倍の確率で近視となる)

 

まとめると「田舎に住んで勉強せずに外で遊べ!」ということになります。
結論は出ましたね? めでたしめでたし。

 
 
 

と言っても現実的には無理なので、何とか近視の進行を抑制できないか
いろいろな研究がされています。

 

そもそもなぜ近視が進行するかというメカニズムについては、

3通りの仮説があるようです。
これを細かく説明するのは難しいので諦めましたが、ごく簡単にいうと
ぼやけた状態の像が網膜に映ることが続くとそれを補正しようとして

眼軸長が伸びる、ということになると思います(正確ではありませんが)。

 

様々な研究の中で、近視抑制の方法として有望そうなのは、、、

 

1. アトロピン点眼
眼のピントを合わせる筋肉の緊張を除く薬ですが、

眩しくなったりという副作用があるので、どの程度の濃度で使用すれば

副作用を抑えて効果が得られるかが難しいようです

 

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2. オルソケラトロジー

就寝中に特殊な形状のハードコンタクトレンズを装用し、

昼間は裸眼で生活する方法です。

一時的に眼球の形状を変化させることで近視を矯正する治療法ですが、

これが近視進行抑制に効果があったという報告が多数あるようです。

しかし、わが国のガイドラインでは治療対象が20歳以上となっており、

子供に装用させることがはたして良いのか、

現在ガイドラインが再検討されています。

 

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3. 多焦点ソフトコンタクトレンズ
いわゆる遠近両用のコンタクトレンズを装用することによって

近視進行を抑制できたという報告があります。

 

ヒトは物を見る時に毛様体筋という筋肉を使ってピントを合わせていますが、

オルソケラトロジーにしても、多焦点ソフトコンタクトレンズにしても、
毛様体筋をリラックスさせた状態で物を見れるようにすることが

近視進行抑制につながるということなのでしょう。

 

実際の治療として使うには現状ではまだ難しそうですが、研究が進むとよいですね。