[緊急を要する目の病気] 網膜動脈閉塞症

こんにちは。四日市市の大川眼科 院長 大川親宏です。

 

目の病気で一刻を争うようなものはあまりないのですが、
ほぼ唯一の例外が「網膜動脈閉塞症」です。

 

人間の体には動脈(心臓からきれいな血液が送られてくる血管)と
静脈(心臓に血液が帰っていく血管)がありますよね。
頭の中から眼球に入ってくる太い血管を網膜中心動脈と呼び、、
これが血栓(血のかたまり)で詰まってしまう病気が「網膜中心動脈閉塞症」です。
また、一番太い動脈ではなくその枝が詰まってしまう病気が「網膜動脈分枝閉塞症」です。

 

網膜中心動脈閉塞症では網膜(物を見るため光を感じる神経の膜)全体に
血流が行かなくなりますのでほぼ真っ暗になります。
網膜動脈分枝閉塞症では詰まった血管の先にある網膜のみに
血流が行かなくなりますので、部分的に見えなくなります(視野の一部が欠ける)。

 

目がみにくくなる病気はたくさんありますが、この病気ほど
急激に(徐々にではなく)見えなくなる病気はおそらく他にはないでしょう。
「○時○分にいきなり真っ暗になった」という場合にはこの病気が疑われます。

 

脳梗塞は脳の血管が詰まる病気です。
網膜動脈閉塞症は目で起こる脳梗塞のようなものです。

 

血液が送られなくなった神経細胞は死んでいきますので、治療は一刻を争います。
治療は次のようなものがあります。
1. 眼球マッサージ-眼球を圧迫することで血栓を目の外へ押し出す
2. 前房穿刺
3. 亜硝酸薬の投与-血管を広げる
4. 高圧酸素療法
5. 血栓溶解薬の投与-血栓を溶かす

 

しかし、発症してから時間が経てば回復は困難となります。

 

通常、動脈が閉塞してから神経細胞が耐えられる時間は1時間程度と言われています。
ですから、突然目が見えなくなった場合には、すぐに眼科にかかることが重要です。

 

CRAO BRAO

 

(写真左:網膜中心動脈閉塞症、写真右:網膜動脈分枝閉塞症

ともに発症から時間が経過した写真)

(出典:「目と健康シリーズ 6」 三和化学)