iPS細胞による加齢黄斑変性の治療

こんにちは。四日市市の大川眼科 院長 大川親宏です。

 

世界初の加齢黄斑変性に対するiPS細胞を用いた移植手術が
行われたことがニュースになっていますね。

 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140912-00000558-san-sctch

 

→加齢黄斑変性の説明はこちら

 

黄斑部(おうはんぶ)とは、、、
網膜(眼球の奥にある光を感じる神経)の中心にある、
細かいものを見るための細胞を集まった部分のことなのですが、
その黄斑部が加齢に伴って障害されて視力が落ちる病気が
加齢黄斑変性です。

 

fig1

 

滲出性と萎縮性の2つのタイプに分類され、
現在のところ治療の対象となっているのは滲出性加齢黄斑変性のみです。
滲出性加齢黄斑変性は、新生血管と呼ばれる異常な血管が
黄斑部に生えることにより黄斑部の網膜色素上皮細胞が障害される病気です。
現在は主に新生血管を弱らせるような薬を眼内に注射する治療が行われていますが、
この治療では悪化を食い止める程度の効果しかありません。

 

fig2

 

理化学研究所で行われた今回の移植手術は、iPS細胞を用いて網膜色素上皮を作り、
それを移植することによって視力を回復させようというものです。

 

fig4

 

今回の研究のリーダーである高橋政代先生のお話を今年1月の学会で拝聴しました。
それによると、今回の臨床研究の1番の目的は安全性の確認とのことです。
移植した細胞がガンになったりしないか、定期的に全身を調べたりするようです。

 

また、治療がうまくいっても1.0のような良好な視力が望めるものではなく、
0.1程度の視力しか得られません。
したがって、移植治療だけで治療が完結するものではなく、
ルーペなどの道具を上手に使うことで生活をしやすくする工夫が必要です。
(いわゆるロービジョンケアとよばれるものです)

 

今回の研究がうまくいったとしても、今のやり方ではあまりにもお金がかかりすぎるそうで、
もっと安く網膜細胞を作れるようにならないと一般的な治療には使えないようです。

 

いずれにしても、画期的な治療の第一歩が記されたわけですから、
今後研究がよい方向に進むように願いたいものですね。

 
(図はいずれも理化学研究所のHPより引用)