第16回東海黄斑疾患研究会

こんにちは。三重県四日市市の大川眼科 院長です。

 

少し前の話になりますが、

8/8(木)の診察終了後、名古屋で行われた勉強会に参加しました。

黄斑疾患とは読んで字のごとく黄斑部の病気のことで、代表的なものとして加齢黄斑変性(AMD)があります。

最近では様々な薬物療法が行われています。

 

◎ 教育講演 「患者満足度を高めるAMD治療とは?」 杏林アイセンター 山本亜希子先生

AMDの治療には抗VEGF剤と呼ばれる薬を眼内に直接注射する治療が一般的ですが、

この注射は1回すればおしまいではなく、経過をみながら何回も打つ必要があります。

できる限り少ない回数の治療で済めば、医師にとっても患者にとっても楽でよいのですが、、、

 

山本先生は杏林大での加齢黄斑変性に対するルセンティスの治療成績についてお話いただきました。

ルセンティスとは抗VEGF剤の一種で、治療開始時に月1回の注射を3か月連続で行い、

その後は経過をみながら必要に応じて追加していくというのが一般的です。

どの程度悪くなれば追加するかは施設によって様々だと思うのですが、

杏林大では視力の変化がなくてもOCTで変化があれば注射の追加を行うそうです。

それでも2年目以降に追加が不要だった患者さんは30%に過ぎなかったそうです。

 

特別講演 「血管新生抑制の光と影」 阪大 臨床遺伝子治療学 教授 森下竜一先生

滲出型加齢黄斑変性は血管新生、すなわち悪い血管が黄斑部に生えることにより発症します。

この血管新生を起こす原因とされているのがVEGFと呼ばれる物質です。

加齢黄斑変性ではこのVEGFを抑えるための薬(抗VEGF剤)が治療の中心になっています。

 

森下先生は心臓などを専門とする内科の先生で、眼以外の病気に対するVEGFを使った治療、

抗VEGF剤が全身に与える影響についてお話いただきました。

・ 脚の血管が詰まって潰瘍を起こす病気(閉塞性動脈硬化症)に対してVEGFを用いた治療薬がロシアで発売されている

・ VEGFは心筋梗塞で血管が詰まってしまった部分に新たに血管を生えさせる働きがある

・ アバスチン(VEGF剤の一種)を眼に注射すると、正常人で収縮期血圧が5mmHg、拡張期血圧が4mmHg、高血圧患者で収縮期血圧が12mmHg、拡張期血圧が6mmHg上昇する。

 

特に血圧が高い方や、血管が詰まる病気をお持ちの方に加齢黄斑変性の治療を行う際には、内科の先生と十分に連携をとって行うことが大切なようです。